やさしさはどこまで

ここ数日、何度か知らない番号から電話がかかってきていた。

かかってくるのはいつも仕事中なのででられなかったし、フリーダイヤルなので何かの勧誘だろうと思って無視していたのだけど、先月引っ越しをしたばかりなこともあって、何か不動産や公共料金の手続き関係かもしれないと気にかかっていた。

 

今日は休日だったので、夕方ごろかかってきたその番号からの電話にでることができた。

「一点ご案内がありまして」

引っ越しをした不動産会社からの紹介だと説明した後に、勢いよく話し始める。

「この度は……!……!」

「……はい」

「無料で設置……! たいへん…………な!」

「…………」

「……度の!……ウォーターサーバー……!……!」

「あの……ウォーターサーバーの勧誘なら、興味ないんで、二度とかけてこないでください」

「あ、これは…………」

案の定ウォーターサーバーの勧誘の電話で、ついきつい口調で応対してそのまま電話を切ってしまった。

 

電話を切ってから、少しだけ電話の向こうにいた人間のことを考える。

俺が電話にでたとき、彼はとても嬉しそうに声をはずませていた。何度かけても普通だった電話がつながったのだ、それは嬉しかっただろう。彼だって仕事で電話をかけている。好きでやっているわけではないはずし、契約がとれなければ上司から怒鳴られ、殴られるのだろう。

契約する気なんてまったくないが、もう少しやさしく電話を切れば良かったかもしれない。

 

だがそんな仕事に就いた時点で彼にも責任があるのではないだろうか。これがたとえばサポートセンターなら、俺から電話をかけたのだし、こちらが聞きたいことがあって電話をしているのだから、丁寧に対応するのが筋だろう。しかし今回の件はあちらが(違法ではないかもしれないが)こちらの望まない形で個人情報を手に入れ、勧誘の電話をかけてきたのだ。いっそ怒鳴りつけてもいいくらいの出来事ではなかっただろうか。そもそも不動産屋に渡した書類に、勧誘の電話は不要だとチェックボックスに印をつけた記憶がある。

違法か合法かの大きな違いはあるものの、やっていることは振り込み詐欺と変わらないのだ。振り込み詐欺の電話にさえ、やさしさを発揮して丁寧に応対するべきとは思わない。

 

いや、それでも、相手が、悪人なら、何をしても許されるのか。違うだろう。

それがもし振り込み詐欺の電話でも丁寧な口調で、「すみません、今忙しいので」と言って電話を切るのが正しい人間の姿かもしれない。本当にそうか?

 

なんていろいろ考えたあと、なんでこんなことを俺が考えなきゃいけないんだ、とまた少し腹が立ってきた。

正しく生きるのは難しい。

 

私は犬を蹴らない程度にはやさしいけれど、勧誘の電話には腹を立てる。やさしさの基準はその中間のどこかにある。もう少し細かい基準は、おいおい見つけていこう。

朝のラジオという新世界

伊集院光が深夜だけでなく、朝から昼にかけての時間帯も番組を持ったので、朝のラジオを聴くようになった。ちょうど起きてから出勤の時間帯なので無理なく聴けてありがたい。

これまでラジオといえば深夜ラジオしか聴かなかったし、オールナイトニッポンよりJUNKが好きで、最近では伊集院さんしか聴いていなかった。伊集院さんがやるなら聴いてみようかな、と思って聴き始めたのだけど、これが期待していたより面白く、聴いてみると伊集院さん以外の番組も面白い(具体的にはスーさんのラジオ)。

 

 

大沢悠里のゆうゆうワイド」という文字は知っていたが、文字から受ける印象だけで、悠里さんのことを、五十歳くらいのサバサバした女性だと思っていた。奇しくも俺がイメージしていた想像上の悠里さんは、後番組をやっているジェーン・スーさんほぼそのままだ。

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ジェーンスー - Google 検索

 

 

違う時間帯のラジオを聴くようになってまず気になったのは、伊集院本人が喋る時間が短いこと。深夜ではほぼ一時間ノンストップで曲やCMの時間すら惜しいといわんばかりの勢いでひたすら喋る伊集院さんが、朝のラジオでは放送時間の半分も喋らない。一人でやっているラジオとアシスタントやゲストのいるラジオでは当たり前といえば当たり前なのだけど、ここまで違うのか、と少々驚き、いまだに慣れない。

 

もうひとつ驚いたこととして、2chのコピペが普通に読まれる。

深夜ラジオのネタコーナーと違って、朝のラジオは体験談を募集するのだが、読まれるお便りがどこかで聞いたようなお話であることが数回あった。コピペになっているということは、よくできたお話ということだし、よくできているということは、読まれやすいということだ。体験談のお便りをいちいち全て検索しているとは思えないし、特別なワードが含まれるようなものならともかく、基本的には身の回りで起きた思い出話なので、「自転車 盗まれた」のように検索しても見つけることはできないだろう。

しかし、盗作と決め付けるのも難しい。インターネットに存在しているものと一言一句同じならばそのまま送ったのだろうと断定してもいいが、あくまでもよくある思い出話でしかないのだ。似たような経験をしている人が他にいたとしてもおかしくはない。さらにいえば、もともとの体験談をネットに書きこんだ本人がラジオにも投稿している可能性もある。

 

むかし読売新聞の日曜版で『あたしんち』と隔週で交互に載っていた『わが家のあたしんち』という投稿コーナーでも「自転車のサドル盗まれたから、ブロッコリー刺して帰った」というネタが盗作だと明らかになった訂正文が載っていたことがあったな、と思いだした。

このサドル代わりにブロッコリー刺した話は、よほどウケがいいのか今までに何度も聞いたことがある。

少し調べただけで、すべらない話(テレビ番組)、日常(マンガ・アニメ)、東大生(実際の事件)、youtuber(ユーチューバー)、が出てきた。

 

朝のラジオ特有のことみたいに書いてしまったけど、深夜ラジオのネタのハガキだって、「これネットで見たな」というものが混じることもなくはない。

 

朝のラジオが面白いという話をするつもりだったのに、嫌なことばかり書いちゃったな。

ンモー