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マスクはくさい

記事

今までずっと思っていたがだれにも言えなかったことがある。

マスクってくさくない?

 

マスクをするのはあまり好きではなかった。呼吸をするのが得意な方ではないので、その息苦しさに耐えられないし、メガネをかけているので呼吸の仕方に気をつけないとメガネが曇ってみっともない。それにメガネにマスクという出で立ちはかなり不審者寄りだ。メガネと坊主くらい難しい組み合わせだろう。しかし問題はそれだけではない。くさいのだ。

「お前の口がくさいだけだろ」と思ったそこのお前、そうお前だよ。腕が七本あっていつも線香花火を咥えてシーハーぱちぱちシーハーぱちぱち音を立ててるお前。お前みたいなやつがいるから今まで言い出せなかったんだ。腕が多いのはいいけど、奇数なのはなんで?

 

「マスクってくさくない?」と言うと絶対に「それは口がくさいのでは?」と思われる。たしかに俺の口はくさいかもしれない。でもちゃんと歯を磨いているし、リステリンもちびちびやってる。ただ胃が悪いと胃のにおいがあがってくるらしいのでその可能性もある。俺は胃腸があまり丈夫ではない。しかしその可能性を考慮したうえでもういちど主張したい。

マスクってくさくない?

 

ここ最近は咳が止まらなくて困っていた。人間と会話をする機会のある仕事についているので、マスクは嫌いだがしないわけにもいかない。ゲホゲホやコホコホならともかく、ゲッゲッヒュー、コヒュー、ゲッと音を立てていては人間が逃げていく。やつらは非常に臆病で傲慢な生き物だ。しかたなくマスクをして生活をしているのだけど、これが意外に良い。

良いというのはにおいの話ではなく、咳が止まるのだ。仕組みはよくわからないが乾燥とか湿度とかそういうやつだろう。マスクをすると咳が止まる。大発見。あとしゃべらなければ大丈夫。嬉々として100円ショップに行きマスクを買ってはつけ買ってはつけているのだけど、やはりにおいが気になる。

マスクがくさい。

何度でも言おう。マスクはくさい。なんともいえない独特なにおいがある。間違いない。俺じゃない。くさいのは俺じゃない。

 

つけ始めた瞬間にふっとにおい。その後しばらく何も感じないのだけど、何かのきっかけでまたふっとにおいがするのだ。このにおいはつよさ自体は大したことはないのだけど、どうも鼻につく。なにせ顔のすぐ近くから、というか顔自体を覆っているものなので嫌悪感がひどい。少し調べてみると高いものを買えば大丈夫だとか、香り付きのものもあるとかの情報がでてきてとにかく俺に金を使わせようとする。経済め。だけどもマスクに高い金を払いたくない。わざわざ嫌いなものにお金を払いたがる人はいないだろう。

わかった、においは我慢する。安物のマスクをしている自分が悪いのだ。それはいい。ただひとつ確認したいのは、くさいのはマスクであって俺の口ではないということだ。

これを確かめる方法はひとつ。新品のマスクを嗅げばいいのだ。それでいつものにおいがすれば、くさいのは俺ではなくマスクだということになる。きっと消毒のにおいだ。

新品のマスクを開封し、おそるおそる鼻を近づける。ゆっくりと息を吸い込んで、においを確かめた。

「……くさい! よしっ! くさいぞ!」

くさいのは俺じゃない! マスクがくさいのだ!

と、大はしゃぎした後に、とんでもない可能性が脳裏をよぎった。

「……これ、自分の鼻がくさいってことはないか?」

呼吸によってマスク内に自分の息が充満して、それがにおうってことは、口のにおいだけじゃなくて、鼻のにおいでもいいわけだ。

しかもそれだといくら新品のマスクを嗅いでも原因を判別できない。

困った。ここにきて恐ろしいことに気付いてしまったようだ。

 

もし俺の鼻がくさいってことになると、もう何も嗅げない。