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カレー屋で怒って帰った

日記

カレーを食べた。

 

たまたま外でカレーを食べたくなったときに、近くにいい感じのカレー屋さんがあった。私がカレーを選ぶときの基準は、濃いかどうかで、濃ければ濃いほどおいしいと感じる。自分でつくるときも、正しい分量よりもかなり水を少なめに、どろっとしたカレーばかりつくっている。

カレーの濃さといえば、私の地元には『インデアンカレー』という、ラーメンで言えば天下一品のような濃さのカレー屋があった。あまり通った記憶はないのだけど、どうもそこのカレーが私の味覚に影響を及ぼしているらしい。

カレーは大好きなのだけど、そんな好みなのであまり外食では満足できない。ココイチのルーは薄すぎるし、松屋もいまひとつ、ゴーゴーカレーは普通。神保町なんかにある名店などは1000円以上して高すぎる。インド人やネパール人のお店も大好きなんだけど、あれはカレーとはまた別ジャンルのカレーだろう。米が食べたいときには選べない。

 

かなり面倒な好みだと自覚しているのだけど、今日行ったカレー屋さんは大盛を謳っていて、かなりこってり系。値段も890円と、ちょっとだけ高いが、角煮のような肉がごろごろ入っていておいしかったので、割高感はない。いいお店だった。

 

さて、ここからようやく本題になる。

私がカレー屋に入ったのはまだ夕方五時ごろで、お客さんも先に入っていた二人組だけだった。食券を買って店員さんに渡すと「奥から詰めてお座りください」と案内された。カウンターだけの、奥に細長い小さなお店だ。

ガラガラなのに、店内の奥で固まって知らない人と一緒にカレーを食べるのは、ちょっと違和感があったが、これから混み始めたときに、詰めていないと空いている座席が飛び飛びになってしまうのでしかたない。

私がカレーを半分くらい食べたころ、もうひとりお客さんが入ってきた。

 

ものすごく太っている。

 

別にバカにしているわけではない。なのにわざわざ書いたのは、このお客さんの体型がこのあとの話に関係してくるからだ。それに、大盛のカレー屋さんにはよく似合うので、良いと思う’。違う、そういうことじゃない。

スーツを着たサラリーマン風のそのお客さんは、イスに荷物をどっかり置くと、入り口の引き戸と格闘しはじめた。ガタガタと音を立てているので、店内にいた全員のその人を見た。しばらくしてから、店員さんが少しおかしそうに注意する。

「それ、逆です」

閉めようとしていたドアは本来動かしてはいけない部分で、何かストッパーのようなものが噛ませてあったらしい。帰るときに確認したら、空気の流れをつくるためか、きっちり最後まで閉まりきらないように、間にダンボールを挟んでいたし、一度動かしてしまうと元に戻すのは少しややこしい。

逆だと言われても、無言とガタガタとドアを閉めようとしているお客さんに、「おいおい」という空気が店内に充満する。

「開けたドアを閉めればいいのに、なんで間違っちゃうんだよ!」と脳内で突っ込んだ。しかしまあ、そういうこともあるだろう。自分も同じようなことをラーメン屋さんでやったことはある。

 

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画像はイメージです。

 

ふたりいる店員さんのうち、「逆です」と言った店員さんが「なんでよ」と言っているのが聞こえてしまった。かなり小さい声だったので、正面にいた自分以外には聞こえていなかったと思う。少なくとも入り口近くにいたそのお客さんには聞こえていないはずだ。

しかし、発言のあとに少しだけ笑ったり、店内の空気が弛緩したことは、伝わっただろうと思う。

ドアを閉めるのを諦めて、食券を買ったお客さんはそのまま入り口近くの席に座ろうとした。正直いって体型的にも奥に詰めて座るのは厳しいかもしれないので、その判断は妥当だったはずだ。しかし、店員さんいつも通りの応対をした「奥に詰めてお座りください」

 

帰ってしまった。

 

何が起きたかよくわからなかった。

「帰った?」「あの人、食券買ってたよね?」「どういうこと?」

隣に座っている同行者に確認するが、判然としない。店員さんも顔を見合わせている。このときようやく、彼が怒っていたのだとわかった。

おそらく彼は、ドアを閉められないことを笑われたのを、<デブだから笑われた>のだと思ったのだ。

そして次にこう思ったに違いない。<デブであることは笑うのに、デブであるがゆえの特別扱いはしないのか>と。

 

カレー屋で居合わせた彼は、結局一言も言葉を発さなかった。