傘と自転車はもっと進化してもいい。

 今月、無職になり時間ができたのでロードバイクを買いました。あの、ハンドルが下にくいってなってるめっちゃかっこいいやつです。Bianchiなのに緑色じゃないやつにしました。安かったから。

 子供のころからずっと「傘と自転車はもっと進化していい」と思っていました。中学生のころ乗っていた自転車はMIYATAのいわゆるママチャリです。通学するのに不自由はありませんでしたが、それでも漠然と「今の時代の技術ならもっと速くてもいいはず」だと考えていました。ロードバイクという存在を知ったのは友人Fくんからです。

 当時自分とFくんとは「ママチャリでとにかく遠くへ行く」という遊びにはまっていて、北海道の何もない道を早朝に出発し昼頃に折り返して帰ってくるということを繰り返していました。あまりに過酷な道程に弱音を吐き「もっと楽な手段があるんじゃないか」とぼやく僕にFくんは「調べてみたんだけど、ロードバイクっていう自転車があるらしい」と教えてくれました。

 僕らの住んでいた帯広市にも当然のことながらいくつもの自転車屋があって、どこかの店ではロードも買えたと思うのですが、中学生の僕らにはそれが自分たちにも乗れるという認識はまったくありませんでした。

 中学校で使っていた英語の教科書にはランス・アームストロングが癌から復活したエピソードも載っていたし、北海道の人気タレント大泉洋が声優を担当した那須アンダルシアの夏も公開されていました。しかし実物を見たことはありません。

 田舎の学問より京の昼寝という言葉もありますが、田舎の中学生だった僕らには、ロードバイクなんてものはハリーポッターの箒と同じくらいの存在感でした。

 実際にロードバイクに乗るようになるのはそこから五年後、大学生になってからなのだけど、乗るようになってからはあの頃から抱いていた「もっと進化してもいい」という疑問に答えが出ました。自分が知らなかっただけで、めちゃくちゃ進化してました。

 めちゃくちゃ速いし、めちゃくちゃ遠くまで行ける。

 もちろん乗りこなすにはそれなりにきつい思いをして鍛えないと全然速くならないし遠くにも行けないのだけど、あの頃重いママチャリで北海道の山を登っていたことを考えればなんてことないはず。

 もし中学生の自分と話すことができたら、お前が心配しなくても人間って色々進歩してるぞ、と伝えたい。

 傘はもっと頑張れ。