ここで逆立ちハミング相撲をとらないでください。

お気に入りの場所がある。公民館の屋上の広場だ。

4階の建物の屋上なので、それなりに高さがある。身長より高い柵には注意書きが『危ないのでのぼらないでください』。

柵の向こう側にも少しだけスペースがあって、見ていると「あそこに立ってみたい!」という心がうずくので、やんちゃな小学生ならやりかねない。

しばらくはその注意書きひとつだったが、ある日新しいものが追加されていた。

『ここからモノを投げないでください』

投げたやつがいるんだ。そうでなければわざわざ書かない。下は公園になっているので、何かを投げて遊んだのだろう。

中学生のときに丸めた紙くずを窓から投げて下にいるやつがキャッチするという遊びが流行ったことがある。ただそれだけのものなのに妙に楽しいから困ってしまう。

遊びを初めて十数分後、先生が教室に入ってきた。キャッチしている様子は他の教室の窓からも見えるのでバレていたのだ。

一緒に遊んでいた連中と一列に並ばされて「自分たちが何をしたのかわかってるのか!」

「……すみません」

「……俺はやってません」

「……俺もやってません」

「……俺もやってません」

「……俺もやってません」

となって、俺だけ怒られたことがあるのでわかる。並ぶ順番が悪かった。しかもみんなが俺を裏切ったのではなく、俺がみんなを裏切ったという扱いになったのだからやりきれない。証拠がないのに自白して仲間を巻き込むやつは、役立たずだ。

あのときの馬鹿な自分たちと同じように、モノを投げて遊んだやつがここにもいた。

『モノを投げないでください』

だから注意書きが増えたいのだ。もし、彼らがモノを投げずに別の遊びをしていたらどうだろう。スキップしながら鼻毛を抜いていたら……。

「ここでスキップ鼻毛抜き選手権を開催しないでください」

という貼り紙が追加されていたのだろうか。見てみたい。やってみようか。

では、逆立ちした状態でハミングしながら相撲をとったら……

「ここで逆立ちハミング相撲をとらないでください」

危ないから。