都会の真ん中で金魚を釣る『寿々木園』
阿佐ヶ谷駅徒歩三分、住宅地のど真ん中に釣り堀があるらしい。
しかも普通の釣り堀ではなく、金魚が釣れるとのこと。
釣りと聞くと大変そうなイメージがあるけど、金魚なら気軽にできそうだ。
これは面白そう、と思いさっそく行ってきた。(能登たわし)
○住宅地のなかの釣り堀
ここを右に曲がると釣り堀『寿々木園』がある。
目的の釣り堀『寿々木園』は阿佐ヶ谷駅徒歩三分の立地にある。
昼過ぎに出かけて先に商店街で昼食を済ませてから向かったので、駅からは直接歩いていないのだが、寿々木園の一つ前の通りから中央線が走っているのが見えて驚いた。
周囲の風景も本当にただの住宅地で本当にここに釣り堀があるとは思えない。
少し不安になりつつも地図を確認して歩いた。
釣堀の看板と金魚が目印。
あった。
都会のオアシス、寿々木園だ。オアシスは言い過ぎかもしれない。いや、水があればオアシスということにならないだろうか。
同じ中央線沿いだと、駅のホームからも見える市ヶ谷の釣り堀が有名だが、こちらの寿々木園もちょっと変わった釣り堀で、金魚が釣れることで知られている。看板横の金魚の張りぼてもここのシンボルということなのだろう。
(詳しくはこちらのサイトに説明がある。→ 寿々木園)
阿佐ヶ谷といえば、商店街に巨大な張りぼてを吊るす七夕祭りが名物になっているし、張りぼて好きの土地なのかもしれない。
「張りぼての町 阿佐ヶ谷」なんて言ったら怒られるだろうか。
釣堀の看板がなければ入るのもためらいそうな佇まいだが、おそるおそる中を覗いてみると釣りをしている人が数人いたので、入ってみることにした。
入り口の私有地感がすごい。
○いざ釣り堀へ
正面の建物の一階が受付になっている。
中には特に看板や案内は出ていない。受付に座っているおじさんに近づくと、あちらから「はいはい、一時間600円ねー」と気さくに話しかけてくれた。初めての場所に戸惑っていたのでかなりありがたい。
「あ、はい。じゃあ一時間お願いします」
釣堀に着いたのは二時過ぎとあって11月とはいえそれなりに暖かかったのだが、ここのところずっと喉の調子が悪く、長時間屋外にいるのも良くないだろうと思い最短の一時間だけ利用することにした。
バケツの中には大量の魚がいた。
「手前が金魚、奥のが鯉だよ」
どちらにするか迷ったが、様子を見るとやはり名物というだけあって金魚の方が人気のようなので、金魚の池で釣りをしてみよう。
ちなみに「途中で移動はできるんですか?」には「もう一回受付して一時間ごとならいいよ」とのこと。
手前が金魚で奥のが鯉。
受付でお金を払ってチケットをもらう。
竿のレンタルとエサは料金に含まれているようだ。
(釣り堀情報のサイトなどには一時間550円と書いてあるので、価格が変わったか、竿のレンタル料が50円なのかもしれない。)
「そこの入り口の横にあるのが竿ね。黒が金魚で赤が鯉だから」
ふむ、なるほど、と竿の棚に移動したものの、竿の良し悪しがわからないので適当に手前にあったものを選んで借りた。
入り口にある竿を借りる。竿は黒が金魚用で赤が鯉用。
座布団も用意してある。
「こうやってエサを丸めて、針につけて、こうね」とエサのつけ方を教えてもらい、金魚の池に向かう。
○金魚のエサ
金魚のエサはだんごになっている。
「あ~これが金魚のエサのにおいか~」という香りがした。
だんご状になっているエサからひとつまみちぎって丸め、針に刺す。エサの原料は何かわからないが、独特のにおいがする。猫のエサや雨の日にどこからともなく漂ってくるようなにおいだ。気になる人はウエットティッシュなど持参すると良いかもしれない。私はうっかりジーパンで拭いてしまい、帰ってから洗わないといけなくなった。
○釣り開始
針にエサをつけ、池に投げ込む。
池は金魚に住みよい環境になっているのか、かなり濁っていて中は見えない。
ただ近くにいる金魚は見えるので、かなりの数の金魚がいることがわかる。
釣り上げるためには浮きを目視してかかったかどうか判断する必要がある。
穏やかな日差し。
釣り始めてから十分、まったく反応がない。
たまに浮きが動いているし、竿をあげるとエサだけ取られていることが何度があった。タイミングよく金魚がエサを口にしているときにひきあげないと釣れないようだ。(書いてて思ったが、当たり前だ)
鳥の死骸だけが近づいてくる。
二十分と少したったころ、手ごたえがあった。
ウキが左側に引っ張られる感覚があった。今までも何度か似たような感触はあったのだが、慌てて引き揚げてしまって逃がしてしまっている。
少し待って、エサに金魚が食いつくのを待つ。どのタイミングであげていいのかわからない。「こんなもんかな」とおそるおそる竿をあげてみる。
竿がしなった! 重量がある! 重いってうれしい!
一匹目!
小躍りするくらい喜んで金魚を手に取る。釣った金魚は持ち帰れるらしいのだが、自分の生活すらおぼつかない状態で生き物を飼う余裕はない。釣れたらすぐ写真を撮れるように用意していたので、写真だけ撮ってすぐ針を外し池に戻した。素手で生きた魚を触るなんて何年振りだろう。
このキャッチ&リリースに同行者は「わあ、命をもてあそんでいる」と喜んでいた。
ご家族連れの姿も。
しかしここから、まったく何も動かなくなった。
池の向かい側にいるおじさんなどはテンポ良く次々と釣り上げているのに、自分の竿には反応がない。
エサのつけ方が悪くて外れてしまうのかと思い何度かつけ方を変えてみるのだけど、成果はなし。反応があったと思い竿をあげても、エサの外れた針が出てくるだけだ。金魚釣り、意外と難しいぞ。
塀に直接時計がつけてある。
時計が備え付けられているので、うっかり時間をオーバーする心配もない。
もしオーバーした場合は30分につき300円の追加料金がかかるらしい。
一番多く釣っていたおじさんが他のおじさんに話しかけられて「どうですか?」「いやあ、朝からいるけど、この時間はだめだね」などと会話していた。この時間はだめらしい。なんてことだ。
結局このままぼんやりと過ごした。
それ以降釣れずに時間になったため、竿を片付けて受付のおじさんに返す。同行者は初めての釣りにも関わらず二匹釣っていた。
あとから調べてわかったことだが、熟練者になる一時間あれば何十匹も釣り上げるそうだ。ちなみに金魚釣りのコツは、エサを投げ入れて食いつきがなければ待ったりせずに、ポンポンとテンポよく30秒くらいで竿をあげてしまうのが良いらしい。なんと。うっかり釣りのイメージでじーっと待ってしまっていた。やっぱり事前の下調べは大事だ。
○タイムアップ
大漁!
ちょうどたくさん釣っているおじさんがバケツを持って受付近くに来ていたので中を見せてもらったら、大量の金魚が入っていた。これが熟練者か! と感動するも、おじさんは惜しげもなくじゃばじゃばと金魚を池に放っていた。
もったいない気もするけど、そりゃあんなに飼えないもの。当然か。
帰り際に改めて見ると周りはアパートだらけだ。
こっちの水は澄んでいてきれい。
受付前の生け簀を覗くと池に放流する前なのか大量の金魚がいた。のびのびと泳いでいて少しうらやましい。
そういえば釣った金魚をすぐに池に戻してしまったけど、帰るまではバケツにでも入れておけば良かった。今さら大したことじゃないけど、結果が目に見えているとまたちょっと楽しかったかもしれない。うーむ、この経験は次回に活かそう。
大量にあったシーチキンの缶はエサの原料かな。
○下調べは大事だ
釣り経験は小学生のころ父に連れられて行ったカレイ釣りと、ワカサギ釣りが数回あるくらいだったが、十分楽しめた。
唯一後悔があるとすれば、もっとしっかり釣り方を調べてから行けばよかったということくらいか。小学生でもわかりそうなものだが、やっぱりなんとなくでうまくいくことなんかないのね。
また機会があれば反省を活かすためにも、挑戦したい。金魚釣り。
魚を触ったら手を洗おう。
○寿々木園
JR中央線阿佐ヶ谷駅徒歩3分。
料金:一時間 600円(竿・エサつき)