この人に嫌われないのは無理だな

ミスタードーナツってカフェオレがおかわりし放題なんですよ。320円でマックのコーヒーとかと比べちゃうと高く感じるかもしれないけど、ドトールとかにいっても普通のコーヒーで300円くらいはしますから、かなりお得です。暇な店だと店員さんがポットでおかわりを持ってきてくれることもありますけど、基本的には自分でレジに行って「おかわり!」とお願いしなくちゃならない。この「おかわり!」の声はなるべく明るい方がいいですね。ドーナツ屋さんというのは楽しいところなので。

その楽しいドーナツ屋さんにいたとき、やけの話し声の大きいグループがあったのでつい聞いてしまいまして。マックの女子高生じゃなくてミスドのおばさんです。ミスおばです。そのミスおばは六人のグループで、どうやらバドミントンサークルの人たちらしいんです。体育館、ラケット、なんて単語が耳に入ってきました。中でも一人、特に声の大きいおばさんがいて、グループ全体の声が大きいのにそのなかでもさらに声が大きい、芸人全員声が大きいのにさらに声が大きいタウンタウン浜田みたいなおばさんがいたので今後そのおばさんはハマチャンと呼んでいきます。

ハマチャンは何かに怒ってるみたいなんですよ。ぷりぷりぷりぷりしてる。何に怒っているかというと、その場にいないバドミントンサークルの人に怒ってるみたいなんですね。その人の名前を連呼していたので覚えてしまったのですが、そのまま書くのはためらわれるので仮に松本としておきしょう。ミスドの店員さんに松本という名前の人がいたら居心地悪かったと思います。ずっと店内で「松本さんは本当にありえない」「松本さんて人はもともと」などと松本トークが繰り広げられているのですから。

松本が何をしたのか。何もしてないんです。何もしていないのに怒られている。どういうわけか。これは何もしないことがよくなかったみたいですね。とんちみたい。でも社会性のある動物って気持ちととんちでできているのでかわいそうですね。

具体的に何が起きたかというと、ハマチャンが体育館に向かうバスにラケットを忘れてしまったそうなんです。網棚に置いていたのを忘れてそのままバスを降りてしまった。バドミントンをするためにわざわざでかけたのに、ラケットがないから結局バドミントンはできなかった。こんなおかしなことはない。間違ってる。ではハマチャンがなぜバドミントンができなかったのか。まっちゃんが置き去りにされたラケットに気づかなかったから。「普通持って降りるでしょ。信じられなーい」とはハマチャンの意見。「もともとあの人は自分のことしか考えてないのよ」

すごい。つよい。六人いるうちの四人は「そんなこといってもしかたないじゃない」「自分のラケットなんだから、自分で管理しないと」とまともなことを言って諌めても、ハマチャンは一歩もひきません。とにかく松本が悪いの一点張り。俺も帰宅したときに奥さんが電話を切らなかったことで激怒するのは亭主関白が過ぎると思うし、ワイドナショーで一度たしなめられているのにガキの使いの2Sトークで蒸し返すのはどうかと思ったけど、今回の件は松本別に悪くありません。普通にバスに乗って普通に自分のラケットを持って普通に体育館に行っただけです。

親切にしたことで好かれるのは順当だけど、親切にしないことで嫌われるのは理不尽だと思います。バスを降りるとき気を聞かせて他の人のバッグまで持って降りることができるか、自分はどうかと考えれば絶対に無理。そんなことに気づけるわけがありません。気づけた方がいいのもわかるし、それで怒る人がいるのも学びました。でも、自分には当分無理。俺はハマチャンとはまったく関係のない他人で、たまたま同じドーナツ屋でドーナツを食べて会話を聞いただけの人間だけど、この人に嫌われないのはたぶん無理だな。