身体で二択をはずしていく

コンプレックスは金になる。

YouTubeでジャンクPCを直して使えるようにする動画を見ていると、唐突に広告が流れ出す、五秒待って飛ばせばいいのだが、たまにじっくり見てしまう。

情報を圧縮して送りこんでくるような早送り音声と、マンガ調の画像は見やすくて、つい手を止めてしまう。

ただ、これがもし『台所にわく小バエを蛍光イエローにして気分だけ蛍みたいにする新製品』の広告だったら、どんなに店舗がよくても無視するはずだ。興味がないから。

「毛深くてきもーい」

「ていうかハゲってだけで無理なんですけど」

「チビはそもそも眼中にかな」

といったセリフにひっかかるということは、自分にもそのコンプレックスがあるということだ。

身体的特徴は自分で選ぶことはできないので、遺伝と運でほぼ決まる。

 

低身長  ⇔  高身長

毛深い  ⇔  体毛が薄い

ヒゲ濃い ⇔  ヒゲ薄い

ハゲる  ⇔  ハゲない

音痴   ⇔  歌がうまい

運動下手 ⇔  運動上手

くせ毛  ⇔  ストレート

肌が弱い ⇔  肌が強い

……などなど。

 

ありがたいことに、現代の日本で生きていくのには、いくら外れをひいたところで致命的ではない。ただ外れをひくたびに人生の難易度が上がっていくのは間違いない。

スキンケア、皮膚科、ジム、美容院、整形など、大人になれば対策できるようになるので、どうにか生きていける。ただし金はかかる。コンプレックスは金になるのだ。ハゲにくい体質の人は、それだけで毎月5000円の育毛剤代を得している。

かなりハズレをひいてしまった側だと自認している。

思い出して欲しい。身の回りの友人や過去のクラスメイトの人たちを。ハズレをひく人はとことんハズレをひいていたし、アタリをひく人はとことんアタリをひいていたのではないだろうか。

もちろん10割アタリをひく人はほぼいないが、8:2くらいで偏っているような印象だ。アタリの人は8割アタリを。ハズレの人は8割ハズレを。

 

ところで、うえに挙げたものの他にまだ隠された2択が残っている。

アタリをひいた人たちの代表、高身長で歌がうまく身体能力に優れている三代目JSoulブラザーズのみなさんが全員ズルムケであることからわかるように、包茎かどうかはアタリハズレの概念において非常に重要なファクターだ。

 

YouTubeから「包茎ー!」「包茎ー!」「包茎ー!」と聞こえてくる日は近い。

2番レーンから4番レーンまでの興味。

実家の近所にボウリング場があった。徒歩2分。玄関から見える距離だ。

せっかく近所だったのだからもっと通っていれば、今頃は特技にボウリングと書けるくらいになっていたかもしれない。年に数回しか行かなかったのでスコアは100いくかいかないかの平凡なものだ。もったいないことをした。

 

そのボウリング場は自分が小学校を卒業するころには廃業して、本屋になった。本が好きだったので喜んで毎日のように通うことになる。内装はすっかり改装されて、ボウリング場の名残はまったくなくなっていた。

高校生になったころ、中学の同級生がその店でバイトを始めた。特に仲がよかったわけではないが、顔と名前は知っている。

その子は双子の姉妹で、どちらとも一年ずつ同じクラスになったことがあるはずなので、話したことはあると思うのだが、俺には姉なのか妹なのか見分けがつかなかった。

名札を見ればわかるかも、とレジへ向かうと『足立』と名字しか書いてなかった。「どっちかわかんね~」と思いながら会計してもらう。もしかして、とレシートを見たが店員の名前が書いている欄にも『足立』としか印字されていなかったので「どっちかわかんね~」と思いながら自転車を漕いで帰った。

話しかければよかったのだが、双子に「で、どっち?」とは聞きにくい。その後も何回かレジで会計してもらったがどちらかの見分けはつかなかった。三ヶ月ほどでバイトを辞めてしまったようで、答えが出る前に見かけなくなってしまった。

人生で三組の双子に出会ったが、見分けがついたことはない。

 

 

本が好きな子供なら、誰しも図書室や書店の棚を前にして「ここにある本全部読んでみたい」と思うものだ。

ただ自分はかなりネガティブな子だったので、近所の本屋の棚を見ても「全部読むのは無理だな……」と考えるようになっていた。

まず財力がない。それ以上に興味がない。この"興味がない"という事実は、子供だった自分をかなり打ちのめした。

この店にはこれだけ大量の本があるのに、自分が興味を持てるのはごく一部。具体的には2番レーンから4番レーンがあった3列程度だ。

元1番レーンは絵本や児童書などの子供向けのゾーン。元2番レーンは文芸の単行本、元3番と4番レーンが文庫本。元5番レーンはバイクや旅行などの雑誌、元6番から先はなんだったっけ……。素通りしていたので何が置いてあったか覚えていない。

自分にとって面白く読める本は、2番レーンから4番レーンの狭い範囲だけで、しかもそこにある本を全て楽しく読めるわけではなくて、せいぜい十分の一がいいところだろうか。そのことに気付いてから「じゃあ自分が好きなものってなんなんだ」と考え始めるようになった。

去年の秋に、祖父の葬儀で久しぶりに実家へ戻った。元ボウリング場の本屋はなくなって、今はドラッグストアになっていた。

 

窓を開けて「ちんこ」と叫ぶ最先端。

オンライン飲み会が流行っている。

自分は下戸でケチなので、自宅でコーラを飲んで好きなお菓子を食べているだけで飲み会に参加した気分になれるのはかなりありがたい。

飲み会なのでくだらない話になることもある。

「道に鳩くらいでっかいウンコが落ちててさ」

「でっかいチンコの同級生が便器から2m離れて小便する芸を見せてくれた」

と、内容はともかくそんな感じだ。

 

ところで話は変わるのだけど、今は換気をした方がいいということになっていて、ちょうど気温も上がってきたので、寝るとき以外は窓を開けて生活しているんですが、アパートの住人に菓子折とか持ってお詫びに行った方がいいですか?